ダークツーリズム・「痛みの共感から始める創造性」

ポッドキャスト「ラジオ版 学問ノススメ」2013年10月6日放送分
ゲスト:東浩紀 を通勤の移動中に聞いた。
http://www.jfn.jp/News/view/susume/5154
東さんが最近出された
チェルノブイリダークツーリズムガイド 思想地図β vol.4-1』
福島第一原発観光地化計画 思想地図β vol.4-2』を踏まえつつ
福島のダークツーリズムというものを提唱している。


チェルノブイリと同様に、世界のほとんどの人々は、
事故が起きるまで「福島」という地名を知らなかった。
そして、一度ついてしまった福島=原発事故というイメージを取り去るには、
おそらく50年という単位の時間を要する。
今は、汚染水の問題で頭を悩ませているが、今後数十年にわたり、
様々な、頭をかかえる事態が生まれ続けるかもしれない。
ならば、原発事故というイメージを払拭しようとせず、
積極的に、負の記憶として活用していくということもありえるのでは?」
というのが、東さんの提起。
書籍を購入したわけではないので、詳しくは知らない。


ダークツーリズムという言葉を知ったのはつい最近のことだが、
土地の記憶というものにもともと興味があったので、
この言葉は知らなかったけれども、その周辺のことを私もよく考えていた。


■昨日(2013/10/12)NHKEテレ ETV特集
「僕は忘れない〜瀬戸内 ハンセン病療養所の島〜」を見る。
番組のHP
ハンセン病療養所が置かれた瀬戸内の大島という小さな島。
その療養所の職員の子供として島に来た小学生3人と、
ハンセン病の元患者(現在ではハンセン病は治る病気なので元患者)とのふれあい。
小学生は観光客に対して島のガイドをすることとなり、2006年当時話題になったが、
小学校を卒業して少年は島を離れる。
そして、大学入学を前にして、再び島を訪れ、改めて島の記憶を学び直し、
ガイドを再会する様子を追ったドキュメント。
ダークツーリズムという言葉はこの番組の中では用いられていなかったが、
このガイドはダークツーリズムにあたると思う。


「ダークツーリズム」について検索してみると、
この東浩紀さんの出版社ゲンロンとともに、
日本におけるダークツーリズムの研究の第一人者の井出明へのインタビューに行き当たる。
(今年の6月から7月にかけての記事)
http://genroninfo.hatenablog.com/entry/2013/06/03/142422
http://genroninfo.hatenablog.com/entry/2013/06/14/160032
http://genroninfo.hatenablog.com/entry/2013/07/22/173523

前・中・後編ともによいインタビューなので、あえてここでよいところを抜粋することもできないが、
ハンセン病療養所について触れられている箇所もあったので、一部引用する。

ここで「近代」と言う言葉を軸にして、ダークツーリズムを考えてみましょう。
たとえば、熊本には水俣病資料館がありますが、
もう一つ、熊本市からちょっと北に行ったところに、菊池恵楓園というハンセン病の療養所があって、
資料館も併設されています。これら二つを続けて見学すると、ダークツーリズムの意味が分かってきます。


Q:どういうことでしょう?


井出:一つを見るだけではわからないことがわかるということです。
ハンセン病水俣病はまったく別の病気ですが、実はある意味でつながっています。
水俣病が生まれた理由は、近代化の中で、公害(という言葉も当時はありませんが)
をまったく気にしないで工場を操業させたからです。
その結果、水俣病が発生し、患者は救済されるどころか、大変な社会差別を受けることになってしまった。


一方でハンセン病の人たちにも差別されてきた歴史があります。
昭和のはじめに、健全ではない人間を隔離しようという優生思想がナチスから日本に伝わってきました。
優生思想は、国家の生産性に寄与しない人間を排除しようとする考え方で、
近代国家の富国強兵政策や殖産興業政策と重なりあう部分があります。
ちょうどそのとき日本が軍国主義化していたことも手伝って、病気の人間は社会から隔離する傾向が強まり、
ハンセン病の患者さんたちは療養所に閉じ込められるようになりました。
そしてハンセン病患者さんたちへの不合理な隔離政策は、戦後に特効薬が作られた後も、そのまま残ってしまいました。


2つの病気は医学的には全く別物ですが、近代化の流れの中でみると、
社会から排除され、まさに近代化のしわ寄せがおよんでしまったのだと理解出来ます。
そういった共通点には意外に気付きにくいもので、
水俣病資料館で研究者に話を聞いたときにも、ハンセン病と共通点があるという話はされませんでしたし、
ハンセン病資料館で会った学芸員の方も、その時点で水俣病資料館に行ったことがないとおっしゃっていました。
しかし旅人として両方の施設に行けば、より広い視野から社会をとらえられるのです。
(※但し、今年のハンセン病市民学会は、
水俣病との社会的共通項を探ることも論点の一つに挙げていることにも注意しておきたい。)


ETV特集の中でも紹介されていたが、
この大島も現在開催中の瀬戸内国際芸術祭に参加している。
http://setouchi-artfest.jp/artworks/island/island-ooshima
その主となるアーティスト「やさしい美術プロジェクト」は、この大島での取り組みで
今月2013年のグッドデザイン賞を受賞した。


ドキュメントの中でも葛藤の様子が映し出されていたが、
多くのダークツーリズムの場所においては、今でもその当事者が苦しんでおり、
あるいは差別を受け続けている環境にある。
「やさしい美術プロジェクト」の受賞を受けてのコメントには、

当プロジェクトでは今回の評価を契機に、さらに関係施設との連携を深め、
「痛みの共感から始める創造性」を積み重ねてまいります。
やさしい美術 | ハンセン病療養所大島での取り組み{つながりの家} 2013年度 グッドデザイン賞受賞

とあった。

「痛みの共感から始める創造性」
とても深い言葉だと思う。

チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1

チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1