速度

昨日も、休日出勤。
移動中聞いたポッドキャスト「ラジオ版学問のすすめ」2回分、
そして、夜見たETV特集は、私が好ましいと感じている同じ方向を指し示していて興味深かった。



■1つ目は「ラジオ版学問のすすめ」2013/04/14放送:辻信一(文化人類学者)
ラジオ版 学問ノススメ Special Edition


辻信一さんの「スロー・イズ・ビューティフル」は、
ダグラス・ラミスさんの「経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか」とともに、
大学3回生で出会った本で、このような考えにそれまで触れたことはなかったので、とても共感し、
また、共感してしまったことで、ますます就職活動への前向きさを失ってしまった印象深い本。


一貫して、その10年以上前の著作での主張は変わっていない。
と、同時に彼が警鐘を鳴らしている社会のスピードも3.11というインパクトを経てもほぼ変わっていない。
このPodcastの開始30分あたりの言葉を一部、書き出す。(一部言い回しを変えています)

今の社会は、基本的に一人ひとりがいつも
「自分は充分に美しくない、自分は充分に頭が良くない、自分は充分に能力がない」と一生悩み続ける。
なんでそうなってしまうのか考えると、やはり経済の仕組みに行き当たる。
現在の経済の仕組みは、自分に足りないものを買って手に入れる。
そのために一生懸命働いて、お金稼いで、やっと得る。そういうところに追い詰められている。
いわゆる経済成長を社会の目的のようにしているけど、
考えてみれば、そうやってみんなが不満足でものを買い続けていることで、経済成長が成り立っている。
だから、景気が悪くなると「どうやって買わせるか」ということばかり、政治家から経済学者からみんな考えている。
ものだけじゃなくて資格を取らなければならない、学ばなければならない、身につけなければならない。
と常に我々は駆り立てられている。一時たりとも、「あ、これでいいんだ」って思えない。
それって、ほんとに幸せな人生なんだろうか・・と
不満足によってしか成り立たない社会というのは逆立ちしているくらい不自然なことなのではないか。

この放送では、彼同様に、今の社会・経済のあり方に疑問を呈しイギリスでシューマッハー・カレッジを運営している
インド人環境思想家サティシュ・クマール氏の紹介が中心。
辻氏のサティシュへの尊敬の仕方は、宗教的カリスマを感じさせてしまう部分もあるが、
辻氏同様、サティシュ・クマールという人も興味深い。



■2つ目は「ラジオ版学問のすすめ」2012/12/23放送:三浦しをん(作家)
http://www.jfn.co.jp/susume/2012.html#51


三浦しをんさんは映画にもなっている「舟を編む」の著者であるけれども、
この放送では「神去(かむさり)なあなあ夜話」という林業に就いた青年の物語について述べられている。
彼女の祖父が三重県林業をしており、林業が農業に比べて、
何をどうして生計を立てているのかが都会の人からはなかなか見えてこないという思いから、
書き始めたとのこと。

のんびりしているかもしれないけど
今年度の売上はいくらとか、自分が生きている間に何ができるかとか
そればっかりじゃない視野を持っていたほうが、
100年後の人たちのためにもなるのではないか。
引き継いでもらうために今を頑張るという視点を今は持ちにく。
そういう視点が少しはあってもいいのではないのか?


全部を自分が生きている間に答えを出そうと思わずに
自分が死んだあとにその時生きている人たちがより良い方向に進めてくれるはずだ
というふうに考えつつ、今の最善を選ぶ。

神去なあなあ夜話

神去なあなあ夜話


■3つ目 ETV特集:「仏像の魂に挑む〜東京藝術大学 若者たちの一年〜」(4月20日23:00)
これは、東京藝術大学文化財保存学・保存修復彫刻研究室(せんとくん籔内佐斗司研究室)
の大学院生が卒業制作として模刻(古い仏像の複製を原寸で同材で作る)する過程を追ったドキュメント。


私自身も仏像を見るのがとても好きで、中学2年の時に阿弥陀如来像、高校1年生の時に不動明王像を
彫ることに、まさに寝る間も惜しんでハマるという変わった青年だったので、
木の材質によってできる表現が違うことや、彫刻刀がもう少しこういう形状であればいいのにとか、
細かな部分まで、共感を持ち見ることができた。
大人になるまでに、幾度かこの趣味を復活させようと思ったことはあるが、
思うたびに断念してしまった。理由は単純で「膨大に時間がかかる」からである。
とても、ゴールデンウィークをまるまる使ったらできるというものではない。
なかなかそのようなまとまった時間を、確保することは難しい。
(この学生たちも、1年で1体(あるいは1対)のものを制作している)


彼らが持っている視座も、林業とよく似ていると思った。


土曜日の帰路、いつものように書店に立ち寄り本を購入する。
「本の購入は一番安価でリターンの大きい投資(自己投資)」という説を信じ、
2,3割も読まないまま、今週もまた買った。
買った本は、上の傾向とはどちらかというと逆のベクトルを向いているビジネススキルを意識したものが中心。
結局、読むのは2,3割なので、そちらのベクトルへ歩みを進めているとは言えないけれども・・。


・住宅の設計監理50の心得(彰国社
・週刊 ダイヤモンド 2013年 4/20号「今、買うならこれだマル得マンション」(ダイヤモンド社
・Think!春号 No.45:「キャリアを高める知的生産の技術」(東洋経済新報社
・マクスウェルのリーダーシップ集中講義(ディスカバー21)

マクスウェルのリーダーシップ集中講義

マクスウェルのリーダーシップ集中講義


大学生の時の私は、上の3つのスローな価値観を、あるいは今よりも理解していたのかもしれない。
しかし、そうではない価値観(パラダイム)で生きる人々(スロー派が非難する経営者、政治家など)
の価値観に対しては、今よりも無理解だった。
「とにかく、どんな仕事でも進んでやり、はやく役員・経営者になりたい。」という価値観が
ようやくわかりはじめた。
(といいつつも前回は、そのような海外赴任に対しての拒絶感を書いたので、まだまだ拒絶感は強い)


たとえば、下のプレゼンテーションをしているポジティブドリームカンパニーの
代表杉元氏のような生き方を昔はまるで理解できなかった。
このスピーチの後半で、彼は自身が責任ある他に代替できない仕事に就いていたために、
自身の母の最期に立ち会えなかったと、悔しながらに述べている。
そのような代替者がいないという組織体制を作らないようにしように誓ったという言葉とともに、
もし、あそこで私が仕事を放り出して母の病院に行っていたら、今、私はこうして皆さんの前で
お話できる立場にいなかっただろうと思うと述べている。
辻さんはこのような姿勢を「逆立ちしているようだ」と非難すると思う。

【Part2/4】ポジティブドリームパーソンズの挑戦 ウェディング事業から感動創出企業へ - YouTube
【Part3/4】ポジティブドリームパーソンズの挑戦 ウェディング事業から感動創出企業へ - YouTube
【Part4/4】ポジティブドリームパーソンズの挑戦 ウェディング事業から感動創出企業へ - YouTube


しかし、実際、生きていることは、
プールの上に浮いたビーチ板の上を走っているような感覚で、
もっとゆっくり、慎重に、世界に負荷をかけないように、100年先の人に、
あきれられないようにしたいと思うけれども、歩き始めるととたんに沈んでしまう気もする。
沈んだところに、また別の世界が広がっているのかもしれない。