解放区

■BSフジ『Table of Dreams〜夢の食卓〜』第62回「塗師 赤木明登の食卓」を見る。
Table of Dreams
塗師と書いて「ぬし」と読む。赤木明登さんについては雑誌「住む。」で初めて知り、
以前から強い関心を持っていたが、動く姿は初めて見た。
大手出版社の編集者を4年ほど勤めているうちに、自身の空疎さを感じる。
そして輪島塗に魅せられ転職。現在は数人の弟子とともに地に足のついた素朴なもの作り、衣食住をしておられる。
現在50歳。作為的な美しさというものを嫌われる方で、
そのスタンスは、先日書いた建築家ピーター・ズントー氏にも似ている。


いろいろな感覚が麻痺している都会での生活に疲弊し、嫌気がさして、
地方へ、あるいは伝統的なものつくりの場へ回帰したという人の話は、
よくテレビで取り上げられる話であり、今回の番組においても、
その切り口は紋切り型といえば紋切り型であった。


そもそも、輪島塗そのものが経済的に存亡の危機に瀕しているとも聞く。
サラリーマン生活を辞めて、地方へ来て、貧しいけれども、自給自足に近い生きている実感のある生活、
家族と家族的な仕事仲間、地域の仲間に囲まれた生活ができる。よかったね。
という単純な話ではないと思われる。
「どこへ越しても住みにくい」という事態の方が多い気がしてしまう。


赤木明登さんがこうして取り上げられるのも、
編集者で養った(あるいはもともと素養のあった)発信力、
そして「彼の作品」というブランディングに成功している部分が大きい。


テレビではあまり伝わらなかったが、
赤木明登さんが著作を通じてものつくりに投げかけられている問題提起は大きい。
「作家性のないものを作りたい」という試行錯誤が結果的に「彼のところの作品はいい。」となってしまう。
戦略としてそうすることは作家性を目指すことよりも、ある意味、悪趣味だと思うが、
彼の場合、そうなってはいない。

美しいもの

美しいもの


■今朝の朝刊の書評欄に作家朝吹真理子さんの評で、
「独立国家のつくりかた」坂口恭平が紹介されていた。
先々週買ったまま、置きっ放しにしていたが、本日半分ほど読み進める。
0円ハウス Kyohei Sakaguchi-


坂口恭平さんが太陽発電の付いたホームレスの家とともに紹介されているのを見たのは、
私が大学生のときで、正直それを「発見」と見做す視点は学生的だなと感じたが、
今、改めて読むととても共感してしまう。
彼が、「おかしくない?」と拒否している部分に、
私の生活はかなりの部分、からめとられていて、それでいて違和感を感じていたから。


今の空き家率は年々上昇しているのに、なぜ次々と新しい家が建てられるのか?

35年ローンで家を買うことはおかしくないか?。賃貸にしても家賃は高すぎないか?

なぜ土地を個人が保有しているのか、大家さんは本当に家賃を受け取る権利があるのか?

コンクリートの基礎で固定するというのは、土地に負荷をかけ過ぎではないか?


など、
そして、それらから解放されているホームレスの方々への調査は、
レヴィ=ストロースの先住民への調査を思わせる。
ホームレスの人々と彼との間に境界がない。
知識を持つものと観察対象という目線の違いがなく読んでいて心地よい。
(「ブリコラージュ」「野生の思考」「贈与」という言葉が出てくることから、
おそらく、著者の念頭にもレヴィ=ストロースがあるのだろう)


細かな、感想は後半部分を読んでから記そうと思うが、
この社会システムに対しての水の指し方は、本質的で新しいと思った。
スローやロハスといった発想とも少し異なり、ある種の毒と欲を持っている。

藤森照信さんの考えに近いものを感じたが、よりリアルだ。

独立国家のつくりかた (講談社現代新書)

独立国家のつくりかた (講談社現代新書)



■いつものとおり、近くのレンタルビデオ店でアニメDVDを借りる。
「『偽物語』第一巻/かれんビー(上)」
1話、2話が収録されているが、
作中のキャラクターが、作品を実況解説するというおまけがついており、
副音声に戦場ヶ原ひたぎ羽川翼
裏音声に千石撫子阿良々木月火
結果的に、作品に愛着を持つ暇人は、同じ話を3回見ることになる。
実況解説といえども、内容と関係のない話が大半を占めている。
(そのコメントも作者西尾維新によるもの)
作品自体も、ほとんどストーリーに進展はなく、
キャラが立っていることにすべてを背負わせている印象。

偽物語 公式サイト


それぞれが、都会型の生活(マクドナルド化した生活)に対する独自の解放区を作っていると考えてみる。
赤木明登氏の解放区は、自然・昔・美しさへの方向。
坂口恭平氏の解放区は、都市にいながら野生への方向
偽物語の解放区は、実社会とまるで結び付かないという方向
(アニメ全般を指してそういうことも可能であるが、この作品は社会性のなさが顕著)
・・・

それぞれはバラバラの島宇宙だが、合併した状態を想像してみると面白い。
日本の未来はその重なりあう部分にあるのかもしれない。